農地の納税猶予とは
農地の納税猶予とは、要件を満たせば農業相続人が支払う相続税に猶予が与えられる制度です。
受け継ぐ農地の大きさにもよりますが、いきなり膨大な農地にかかる相続税の支払いを請求されてしまうと、農家離れが起きてしまいます。
農地の納税猶予には、相続税の支払いが原因で農家離れが起きてしまうのを防ぐのが目的です。
税金との関係性
税金は農業投資価格で決められて、設定価格は通常の土地価格より低いです。
納税猶予額のイメージは、本来の税額から引かれて農業投資価格による相続税額が残る仕組みになります農業投資価格の金額は地目によって異なり、たとえば田か畑によって農業投資価格に差があるのが特徴です。
また、都道府県によっても金額が異なるので、路線価図・評価倍率表で調べる必要があります。
対象
-納税猶予の対象は3つのいずれかに該当するもので、農業に使用したり、特定貸付や認定都市農地貸付等をした農地です-
1.被相続人から相続して、遺産分割がされているもの
2.贈与税納税猶予の対象になるもので、適用を受けるには経済産業大臣認定が必要
3.被相続人から相続した年に生前一括贈与を受けた場合が対象
被相続人が特定貸付けを行っていた農地等で上記3つが該当していて、農地中間管理事業や利用権設定等促進事業による貸付を行っていても対象です。
農地の納税猶予を利用するときの注意点
農地の納税猶予はメリットばかりで、相続税の納税負担を軽減する制度というイメージが強いと思いますが、注意点を理解しておかないと制度が適用されなかったり、支払う金額が増えたりします。
どのようなことに注意しておけば良いのか、確認しましょう。
農業をやめたら利子税が加算
農地の納税猶予を受けてから農業をやめると、利子税が加算されてしまいます。
利子税の割合は年3.6〜年6.6%であり、申告期限の翌日から数えて納税猶予の期限までが期間で具体的には都市営農農地等を有しているかどうかで、利子税の割合が異なります。
もし都市営農農地等を有している場合、農業相続人にかかる利子税は固定で年3.6%
都市営農農地等を有していない場合、区分に応じて年3.6%〜年6.6%の利子税がかかります。
核燃の利子税特例基準割合が年7.3%未満になると、利子税の計算が必要になります。
計算方法は「利子税×利子税特例基準割合÷7.3%」
利子税特例基準割合とは「各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年0.5%の割合を加算した割合」です。
耕作が必須
農地を相続しても、耕作をせずに放っておくと納税猶予の特例が取り消されます。
取り消された場合は納税猶予がくと利子税を納める必要があるので、耕作が必須です。
しかし、何らかの事情で耕作が一時的にできない状態であれば、納税猶予の取り消しはありません。
たとえば災害や疾病が原因で一時的に耕作ができない農地や、土地改良事業等で農地が使用不可能な状態であれば、納税猶予が適用されます。
他にも国や地方公共団体が事業のために農地を農地以外の用途で使用している場合、納税猶予は取り消されません。
農地の貸付には要件を満たす必要がある
農地の納税猶予を受けた農業相続人が障害や疾病で農業ができなくなった場合、特定貸付をすれば納税猶予を受け続けられます。
-貸付の定義は決められていて、3つに該当する要件でなければなりません-
1.貸付する農地の大きさが10アール未満で、相当数の者を対象として定型的条件でおこなう必要
2.営利目的ではない農地の貸付であり、農作物の栽培に使う農地が対象
3.貸付期間が5年を超えないことで、短期間の貸付が条件
また、特定農地を地方公共団体及び農業協同組合以外に貸付すると、さらに要件が義務付けられるので注意してください。
耕作された農地に小規模宅地等の特例は適用されない
小規模宅地等の特例とは、相続税評価額が最大で80%も減額される特例で、宅地の上に建物や建造物が必要になります。
耕作された農地は事業として使用していても、建物や建造物がなければ対象外です。
しかし、営農するための農機や作物の保管する倉庫があれば、小規模宅地等の特例である「特定事業用宅地等」が適用されます。
農地の納税猶予とは、要件を満たせば農業相続人が支払う相続税に猶予が与えられる制度です。
手続きをしたり要件を満たしたりしないと制度が受けられないので、必要書類を持って準備してください。
制度を利用するときの注意点として、農業や耕作を継続したり、貸付時に要件を満たしたりするなどが条件になります。
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