生産緑地の売買・相続について
生産緑地は生産緑地法により市街化区域の営農義務など土地利用に強い制限がかけられた土地で、宅地のように売買することができず、宅地と同じように相続することはできません。
ここでは、生産緑地ならではの売買、相続における、注意すべきポイントを解説します。
生産緑地の売買、また相続の可能性がある方は、ご参考ください。
生産緑地とは?
生産緑地とは簡単に説明すると、市街化区域内において農地等を計画的に保全することにより
農林漁業との調整をとりつつ、良好な都市環境の形成を図ることを目的とした都市計画の制度です。
生産緑地に指定されると、以下のメリットがあります。
- 税制面での優遇措置として、固定資産税及び都市計画税が宅地並み課税から農地課税に変わる
- 相続税の納税猶予を受けることができる
※一方で、以下のようなデメリットもあります※
- 所有者は生産緑地を農地として管理することが義務付けられる (公共施設等を設置する場合や、買取申出により行為制限が解除された場合などを除き、営農義務(農業を営む、従事する義務)を負い、農用地以外での土地利用に制限がかかる)
- 営農義務期間は「指定後30年」と非常に長い期間になる
生産緑地を売買したいときはどうすればいいの?
前提として、生産緑地は「農地としての売買」になります。
売買したことで生産緑地地区の制限が解除されないことに注意してください。
生産緑地の売買の手続きについて
上記の条件を満たせる方であれば、売買で生産緑地を譲り渡すことが可能です。
上記のように、金額の相場も宅地とは大きく異なることや、宅地ではないため
多くの部分は相対で内容を確認していくことになります。
農業委員会の許可をとるため、農地法の規定による届出書を農業委員会に提出する必要があります。
農地法の規定による届出書は、管轄の農業委員会に問い合わせて、フォーマットを貰ってください。
農業委員会は各市町村に1つずつ必ず設置されているわけではありませんので
必ず事前に当自治体に農業委員会があるのか自治体のホームページで調べ、不明な場合は役所に問い合わせをしてください。
生産緑地でポイントなのは、所有者が亡くなる等で相続をする際に後継がおらず、営農が不可能な場合などは
生産緑地指定を解除して「買取り申出」ができることです。
買取り申出とは?
生産緑地の指定を解除する場合に、所有者は該当地区の地方自治体に時価で買取るよう申し出る制度を指します。
自治体は買取りを検討し、一か月経過しても買い取れない場合は、2ヶ月間他の農業関係者に買取りを斡旋し
生産緑地の継続維持に努めなければならない、と定められています。(生産緑地法第10条)
結果、買取り不成立になっても再び生産緑地に戻すことはできず、所有者は買取り申し出から計3ヶ月経過後
地目変更登記をし宅地に転用が可能になります。
実際は、自治体が買い取ることは金銭的に難しく、他の農業関係者も買い取る事例は少ないのが現状です。
買取り申出の際、注意すべきポイント
買取り申出する場合で、該当生産緑地の相続税、贈与税の特例、納税猶予を受けていた場合は
買取り申出から2ヶ月以内に猶予されていた分を納税しないといけなくなります。
また納税額は、猶予を受けていた期間の利子税を猶予開始まで遡って加算された税額になります。
最も重要なポイントは、「相続税(贈与税) + 利子税」を支払わないといけない期間が、生産緑地を宅地化できる
3ヶ月後よりも前の2ヶ月以内ということです。つまり、その土地を売る前に納税しないといけません。
更に一団で生産緑地指定している場合は、周りが300㎡(平方メートル)以上を保持できるかどうかもポイントです。
保持できない場合は生産緑地の指定を続けることができません。
買取り申出を検討する場合は、この点を必ず忘れないようにしてください。
生産緑地の活用方法
生産緑地の買取を申し出る場合、申し出る前に、その土地の資産価値を一度客観的に考えることが重要です。
人口減が続き、三大都市圏での空き家率が上昇し続けている日本では、相当の都心、市街でない限りは、思った以上に資産価値がここ数年で下落していることもあるでしょう。
その用地が市街化区域の街の中心地に近く、木造アパートやマンション、一戸建てなどの新築住宅の建築
造成のニーズがある場合は問題ないかもしれませんが、そうでない場合は、売らずに第三者に賃貸したり
特別養護老人ホーム(特養)に土地を貸す、または遊休地の活用として換地を検討するなど様々な選択肢があります。
売買金額や節税方法などの懸念がある場合は、買い取りを申し出る前に今一度、大事な財産のしっかりとした
資産運用を検討することをお勧めします。