土地売却の際、注意が必要なケースとして生産緑地の売却があります。
◇生産緑地とは◇
生産緑地とは、以下の要件を満たしている農地を指します。
※生産緑地法によって定められた「市街化区域内にある農地」であること
※現に農地として適切に管理され、農作物を栽培していること
※災害などの防止や生活環境の確保に役立ち、将来的に公共施設の敷地として開発するのに適していること
※面積が単独または近隣の農地と合わせて500㎡以上であること(条例によって300㎡以上に引き下げ可能)
※用排水や日照など農業などの条件が良く、営農が継続が可能であること
-なぜ生産緑地という仕組みができたのか-

生産緑地の成立背景には、日本の都市計画法の施行が深く関わっています。
1968年に施行されたこの法律は、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けました。
市街化区域では都市化の進展により地価が上昇し、結果として固定資産税や相続税の増加につながり、元々市街化区域で農業を営んでいた人々にとって、予期せぬ税の負担増となりました。
このような状況に対処するため、市街化区域内の農地の固定資産税や相続税などの税負担を軽減する目的で、生産緑地法が制定されました。
この法律は、農地としての機能を維持しつつ、都市化の進行に伴う負担を軽減するためのものです。
-生産緑地を売却する手順-
生産緑地を売却する具体的な方法・手順を紹介していきます。
自治体へ生産緑地売却を申請する
生産緑地は、はじめから一般企業などに売却できません。まずは自治体へ買取の申請を行います。
生産緑地の売却申し出に必要な書類は、主に以下のとおりです。
・生産緑地買取申出書
・登記事項証明書
・公図・位置図
・農業従事者証明書
・医師の診断書(買取申し出の理由が疾病や故障の場合)
・同意書(申込地の所有権やその他権利を持つ人全員の同意)
・その他市町村長が必要と認める書類 など
自治体から回答をもらう
自治体に申請してから約1カ月で、買取に関する回答が通知されます。
買取ができる場合は、時価を基準にしながら買取価格の相談をします。
買取ができない場合は、自治体が2カ月間、農林漁業をしたい人へのあっせんを行います。ここで希望者が見つからなかった場合、はじめて生産緑地の指定解除の申請ができるようになります。
不動産や買取業者へ売却・賃貸を依頼する
自治体への売却ができなかった場合、ここではじめて一般への売却が可能になります。
生産緑地の指定解除後に売却を検討する場合、不動産業者や農地の扱いに詳しい買取業者への相談がおすすめです。
業者のノウハウをうまく使って、生産緑地を現金化しましょう。
-生産緑地を解除する方法-
生産緑地の指定期間が終了しても、その土地を直ちに自由に使用できるわけではありません。この時点では、指定の解除が可能な状態になったと考えてください。
営農以外の目的で利用する場合や、一般市場で売却するためには、生産緑地を解除するためのプロセスを経る必要があります。
生産緑地の解除のためのプロセスは以下の通りです。
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1.自治体への買取申し出
- 生産緑地を売却したい場合、最初に所有者はその土地を自治体に買い取ってもらうよう申し出ます。
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2.自治体の対応
- 自治体が土地を買い取ることを決定した場合、そのまま売却が進行します。もし自治体が買い取らない場合、農林漁業者などへのあっせんが行われます。
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3.生産緑地指定の解除
- 上記のどちらのケースでも成立しない場合、生産緑地の指定が解除されます。この時点で、営農以外の目的での利用や、一般市場での売却が可能になります。
この厳格な手順は、生産緑地の適切な利用と保護を確保するために設けられています。

次回の記事では【② 生産緑地でのメリット・デメリット~所有者の選択肢】についてになります。